グリマにひとつだけ、感謝していることがある。
セオドレドの死にゆく様を見ずに済んだ。
あれが傷つき戻ってくるのを、出迎えずに済んだ。
惨たらしい傷に触れずに済んだ。
弱々しい吐息を聞かずに済んだ。
そんなものを目の当たりにしていたら、
私はとても、正気ではいられなかった。
どちらにせよ、グリマが政を行っていたに違いない。
私が見たのは、冷たく美しい寝顔だけだ。
この胸の内には、今もかつての猛々しい騎士の姿がある。
息子を亡くした悲しみは、消しようがないが。
彼に情けない姿を見せずに済んだことを、
最後まで応えずにいられたことを、
感謝している。